断酒三十八日目

 断酒にいたるまでの体験談をネットで検索して「お酒が飲みたいな」と思った時には仲間たちの言葉をしっかり読むようにしています。

 

 コラムニストの勝谷誠彦さんの死因が「アルコール性肝炎」と出てきます。仲間が多い人だと想像していますが書かれている内容を読むと勝谷さんと同じような症状だと思い「ひとり」ではないのだと断酒意欲が増します。ぼくもお酒を飲み続けたら死んでしまうので断酒を続けなくてはいけないという思いが強くなるのです。

 

 お酒で失敗してしまう有名人。報道される情報に接していると「お酒をやめろ」と言われてもやめられなかったのだろうと思います。「やめろ」と言われてやめられるのなら死なないし、失敗してしまうこともありません。

 

 断酒日記を書き続けているわたしも飲酒をやめる前は「お酒が飲めないくらいなら死んだほうがましだ」と豪語していました。情けない話しですが「死」を目前にしたらビビッてしまい心底こわくなりました。みんなが聞いて笑えるくらいの状態なら楽しい人で済みますが死んでしまったら笑えません。

 

 死を宣告された当初は「断酒体験談」「アルコール依存症」「肝不全」「肝硬変」などのキーワードで検索しても文章を読んだ瞬間、強烈な吐き気に襲われて満足に読むことすらできませんでした。

 このまま飲み続けていたらどうなるかという情報や写真がわたしの将来なので無意識に肉体が拒絶していたのです。

 

 いまでは黄疸もなくなり数値も良くなってきたので冷静になり「行き着く先」が書かれていても読み進めることができるようになりました。「死の受容」が進んだのだろうかと思ったりします。

 

 芸能人の飲酒で失敗というのは読んでいてもあまり参考になりません。休肝日をもうけようとかお酒をやめたいと思って読むならリアルな断酒日記と七転八倒しているような体験談の方が身につまされる思いと戦っている人が自分だけではないという共感が生まれるのでおすすめです。

 

 まったく知らない人の体験談を読んで「仲間意識」が芽生えたりします。

 

 お酒を溺れる人を悪く書いたり、こころの弱い人として書いている文章を読むと「孤独感」が増して自暴自棄になりそうになったのでおすすめしません。読めば読むほど余計にお酒を飲みたくなります。

 

 行間を読むのが人間ですから悪意はないにせよ、何となく上から目線で断罪しようとしているのではなかろうか、この世からいなくなってしまえと言いたいのだろうかとマイナスイメージばかりを膨らむような文章や人と接していても断酒を続ける意思を強くすることはできません。現実をそのまま受け止められるようなリアルな体験談が断酒を続ける意思を強くしてくれます。

 

 ひとはみんな弱い生き物です。はた目で見たら本人のこころまでは見えませんし、何を考えているのかもよくわかりません。「強い人」を演じてみせているだけかもしれません。わたしはお坊さんなので「ころも」を着ているだけで立派に見えることもあります。実際にはお酒が大好き過ぎて肝臓が悪くなってしまったのですが初めての人にはそのようなことを言うわけがないので立派に見えることもあるでしょう。

 

 一皮むけばいろいろな悩みや弱さを持っています。

 

 すべての人が「弱さ」を隠しているだけです。

 

 弱いわたしを受け入れてくれる人がたくさんいるといいです。